過ぎ去りし季節の夢
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１７歳の春。 親の都合によって、俺はこの街へやってきた。
しかも、その都合とやらをうまく利用して、初めての一人暮らしまで手にする
まあ、それまでが殆ど一人暮らしと同じだったので抵抗感も無いし、生活リズ 学校が変わった、ただそれだけのことだ。 そして、俺はこの日、新しい学校に初めて登校した。 初日ということで早めに来たせいか、登校する生徒の数はまだ少ない。
もっとも子供の数が減っている影響で、この学校も学年に二クラスしか無いと ？「おはようございます」 そんな、どうでもいいことを考えている時、背後からそう声をかけられた。
 透「え、えっと、職員室？」 困った。 何しろ、この学校に来るのは二度目。
以前、編入の手続きをしに来たときに事務室には行ったけど、職員室は場所す
透「ええっと、その……ご、ごめん。あの、俺、今日がこの学校に初めて登校 しどろもどろで答えると、彼女はクスクスと笑いだした。 女の子「そう。それじゃ、私と一緒だね」 透「え？」
そう言うと彼女は先に歩き始めたので、俺もその後を追って歩き出した。これ
そして、この出会いがきっかけで、俺はそれまで体験したこともない出来事の
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【４月５日】
高等部の職員室で教師を前に自己紹介し、この学校のことや、クラスのことを
行く道すがら、担任の先生はいくつか話しかけてきてはいたけど、それに対し
初めてなので、印象を悪くして目を付けられないようにしようという狙いはあ
教室の中には、すでに全員が揃っていたけれど、誰もが登校してきたばかりな そんな喧噪の中、事前に言われていた席へと座る。
後で周りの奴に聞いたけど、今年はクラス替えがあった関係で、転入してきた やがて朝礼が始まり、その後に自己紹介が始まった。 適当に当たり障りの無い挨拶が続いて、俺の番になった。 透「日上透です。よろしくお願いします」 さっき職員室でしたのと同じ、ごく普通の簡単な自己紹介だ。 唯一違ったのは、転入生であるということを付け加えたことだ。 当然のことながら、それまでと違った反応が一部から起こった。
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休み時間。 とにかく、疲れる。 クラスメートＡ「なあ、前は何処に住んでた？」 クラスメートＢ「前の学校って何処？」 クラスメートＣ「いつこの町に来た？」 当たり前のような質問攻勢。 仕方ないとはいえ、これははっきりいってウザイ！ おかげで、休み時間がすっかりつぶれてしまった。
その勢いは始業式が終わっても途切れそうになかったので教室に戻る途中、俺
この後はホームルームがあるけど、それまでちょっとだけ時間があるから、こ でも、新しい学校だから、まだ何処に何の教室があるか判らない。
廊下を真っ直ぐ歩いて角を曲がっているうちに、自分が何処にいるか判らなく 透「参ったな、こりゃ。とりあえず、階段で一階に下りるか」 一度下に降りてみれば、見たことのある場所に出るかと思ったからだ。
そして階段を降り始めたとき、始業式を終えて帰ってくる三年の行列に出くわ 透「やべ……」
一年違いとはいえ、年上なのでこうして集団で来られると、どうしても気が引
俺は出来るだけ顔を合わせないようにして、階段の隅の方を降りていく、そん
 透「……」 思わず見惚れてしまう、と大げさなことを言うくらい綺麗な女生徒。
好みの問題かも知れないけど、その女生徒の笑顔は本当に綺麗で、俺は思わず
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だるい。 無事、教室に戻って見れば、今度はだる〜いクラス委員決め。 それにしても、始業式の後にすぐやらなくてもいいだろう。 しかも、誰がやるかで大揉めしているし。
俺にも委員長のお誘いがあったが、やんわりとお断りしておいたけど。（だっ
でも、こういうのは結局最後には決まっちゃうもので、この時も思った通り、 委員長は、クラスの男子。そして、副委員長は女子という何処でも見る光景だ。 とりあえず、委員長の方は（男だから）いいとして、副委員長の方だ。
 眼鏡をかけて、三つ編み。 しかも、ちょっと大人しそうに見える物腰。
周りの男子が教えてくれたが、この木村千恵という女生徒は、去年も副委員長
まあ、こういう場合、過去にそういう役をやったやつが、もう一度やることが
前に、風紀委員とかやらされて、自分が一番守れずに難儀したことがあるので、
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とりあえず今日の学校は終わった。 何も入ってない鞄に、今日配られたプリントとかを押し込んで教室を出る。 でも、すぐに思うところがあって教室に戻ってきた。 そう、この学校の探険だ。 さっきちょっと歩いたけど、時間が無かったから結局何も判らなかったから。 ということで、俺は鞄を机に置いたまま、学校の中を適当に歩いていった。 まずは三階。 三階は、三年のクラスがあるけれど、もう殆ど誰も残っていなかった。 さすがに、今日は始業式だけなので帰るのが早い。 その他では、校舎の隅に音楽室があるくらいだった。 そして二階。 この階は、二年と一年のクラスがある。 だけど、今の時期はまだ一年が入学していないので閑散としていた。 この階の校舎の隅、三階にある音楽室の下にあたる部屋が美術室になっていた。 でも、他には特にこれといったものは無い。 仕方ないので一度自分の教室に戻って、鞄を手に取ると一階に下りていった。 透「ひょっとして、時間の無駄だったかなぁ？」 独り言を呟きながら、一階を歩く。 一階には職員室があって、図書室と保健室があった。
その他にも倉庫になっている部屋とかがあったけど、いい加減に見るのも嫌に 透「何だか、つまらない学校だな、ここ」 また独り言だ。 でも、そんな独り言が漏れてもおかしくないくらいつまらなかった。 もっとも、学校っていうのは何処もこんな感じなんだろうけど。 透「帰るか」 そう思って、廊下を引き返そうとした時だった。 一階の廊下を突き当たりまで行くと、曲がった先にも廊下が延びていた。 透「あれ……何だこの先？」 よく見ると、その先にも教室らしきものが見えた。 そして、行き交う生徒達の姿も見える。 透「あれって、確か中等部の制服」 そう。この学校では、中等部と高等部で制服の色が違う。
男子は紺のブレザーで、中高で多少デザインが違う程度なんだけど、女子は中 なので、中高の生徒を見分けるのは意外と簡単なわけだ。 それにしても、この通路はひょっとして、中等部の校舎と繋がっているのかな。 そう思った俺は、その通路を歩いていく。 すると思った通り、その先には中等部の生徒達が行き交う校舎だった。 透「へぇ〜、繋がってるんだ」
ちょっと感心して辺りを見ていると、時々すれ違う生徒が怪訝な表情で通り過 高等部の生徒が、中等部の校舎でうろうろしていたら、そりゃ変か。 そう思って来た通路を戻ろうとした際に、ふと窓の外に目を向けた。
 ちょっと暗い表情を浮かべ、しゃがみこんで花壇に咲いている花を見ている。 透「あの子……」 ちょっと気になった。 彼女の、その様子。 花を見つめているその様子に、まるで覇気が感じられなかった。 それ以前に生気も。
普段なら気にもしないかもしれないのに、その時ばかりは不思議と吸い込まれ だから、少し意識的に彼女を見つめてみる。 だけど次の瞬間、見つめている俺の姿に彼女が気づいた。 すると立ち上がり、そそくさと走り去っていってしまった。 透「何だろう……あの子」 何だか、妙に気になる子だな。
ほんの僅かな時間だけ彼女を見ただけだけど、雰囲気とか気配の感じとか、そ
何処がと言われれば、答えられないけれど、とにかく何処かが他人と違う、そ
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一通り学校内を廻って帰ってくると、教室には何人かクラスメートが残ってい た。
もっとも、女子が数人だけだったので、これといって声をかけることもなく自
でも、廊下に出て昇降口へと向かうその時、視界の端に何かが映ったのを感じ
 初日から、いきなり妙なモノを見ちまったな、俺。 今のは、あきらかに人ではない、何か別のモノだ。
最近、見ることが少なくなってきたと思ったのに、また見るようになったのは まあ、今のはあまり危険な感じはしなかったから問題ないだろう。 もっとも、問題があったとしても俺には何も出来ないけど。 俺はそれ以上考えるのをやめて、その場を後にした。
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透「たっだいま、我が家〜」 自分の部屋に戻って、誰もいないのに挨拶をする。 そこはちょっと築年数があるけど、まだ綺麗なワンルームのアパート。 端から見れば寂しいその様子も、俺にはまるで気にならなかった。 透「さってと、とりあえず……」 この後何をしようかと思い、ベッドに横になって考える。 透「何しようかなぁ〜」 まだ日も高いし、時間もたっぷりある。
だけど、この街にやってきて、すでに数日経っていることもあってか、近場で だから、今日はどうしようかと考えてしまう。
明日から本格的に学校が始まれば、きっとゆっくり見て回る暇はないだろうか ……… …… …
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暗い闇。 そして、その中に浮かび上がるモノ達。 それらは、人じゃないモノ。 怖くて逃げ出したいと、何度も思った。 だけど―― 「ほら、透」 そう言って差し出された手に、俺はいつも助けられた。 その手はとても温かくて、いつも優しかった。
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結局、考えているうちに一眠りしてしまったみたいだ。 でも、ちょっと気分が悪い。 何だか夢を見ていたみたいだけど、どんな夢だったのか忘れてしまった。 だけど、この気分からして、その内容は予想がつく。 俺は軽く頭を振り、そのことを振り払ったあと、この後のことを考えた。 外から差し込む明かりで、すでに夕方だと判る。
仕方ないので外出は諦めて、冷蔵庫の中にあるもので適当な料理を作って食べ
そして食べ終わった後は、実家から持ってきたゲームをしながら適当に時間を こうして俺の新しい学校、登校初日は暮れていった。
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