思い出の幼なじみ

幼い頃の記憶。 　私と、私の好きな人が一緒になって遊んだ人。 　時々、私の手を引いてくれた人。 　私達は何処へ行くときも、いつも一緒だった。 　一緒に遊んで、毎日楽しい時間を過ごした。 　ずっと一緒にいることが当たり前だった。 　この人と、いつまでも一緒に……そして、永遠に……

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朝。 　いつもの時間に家を出て、通学路を一人で歩いていく。 　今日は梅雨の中休みみたいで、久々に太陽が顔を覗かせていた。 　日差しはもうすっかり夏で、やっと夏服を着ている意味があるって思うほど 辺りの気温も上がっていた。 　そんな暑い日差しの中を、私は待ち合わせの場所へ向けて歩いていく。 　特に目印のみたいなものは無いけど、必ず通学途中でみんなが合流する場所。 瑞希「失礼なこと言わないでよねぇ〜。それじゃ、まるで、元気だけが取り柄 みたいじゃない」 光一「だってそうだろ？　朝から、そんなきんきん声でわめき散らす元気があ るんだから」 瑞希「何言ってるのよ。あんたが元気なさすぎるんでしょ？　まったく、男の くせにそんな白い肌でさ。もう少し運動でもしたら？」 　いつもの場所で、いつも通りの言い争いをしてる二人を見て、私は自然と笑 みが浮かぶ。 彩音「おはよう、二人とも」 　私は、そんな二人の会話に割り込んで声をかけた。 　すると、さっきまで言い争いをしていた二人が笑みを浮かべて答える。 光一「ああ、おはよう、彩音」 瑞希「おはよう、彩音〜」 彩音「おはよう。朝から元気だね、二人とも」 光一・瑞希「一緒にするなよ（しないでよ）」 彩音「ええ〜、そうかなぁ？」 　私達三人は幼なじみ。小さな時から学校に行く時も、遊びに行く時もずっと 一緒。そして、今もこの関係は続いている。 瑞希「まったく、何でこいつと一緒にされなきゃいけないのよ？」 　彼女の名前は、「小柳瑞希（こやなぎみずき）」。 　私の親友で、私と違って勝ち気で明るい。私が、昔からこんな風になりたい なって憧れてる子。 光一「馬鹿野郎〜。そりゃ、こっちの台詞だ」 　彼の名前は、「辻浦光一（つじうらこういち）」。 　昔から、私達と一緒に遊んでる男の子。ちょっとひ弱で頼りない感じはする けど、いざというときは助けてくれる優しい男の子。 瑞希「何ですってぇ〜」 彩音「もう、二人ともやめなよぉ〜」 　この二人は何かにつけて言い争うことが多くて、こんな様子も毎朝恒例にな っている。 　でも、本当は凄く仲が良くて、こんな風に言い合えるのも、お互いがお互い のことを信頼しきってるからだっていうことを私は知っていた。 　そんな二人の様子を、見るたびに私は思う。 　うらやましい、と。

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学校へと続く坂を上がっていく。 　私達の学校は高台にあるから、通学路からは街を高い位置から一望すること が出来る。 　晴れてる日は、ずっと遠くの山まで見通せて、とても見晴らしが良かった。 彩音「あれ？」 　いつも通り足下に広がる街並みを見ていると、視界の端に気になるものが入 った。 彩音「ねえ、あれ何だろ？」 瑞希「え？　どれ？」 　そこは、今私達がいる場所からちょっと下った場所にある公園。そこに、青 いシートがはってあって、その周りに人だかりが出来ている。 光一「ひょっとして、あの公園か？」 彩音「うん」 　光一の表情が曇る。 光一「朝、ニュースになってたぜ。また事件だってさ」 彩音「あ……そう」 　ちょっとだけ、それを見つけたことを後悔した。 　この街は、時々こういうことがある。 　年に何度か、人が襲われて怪我をしたり、時には亡くなったりすることが。 　そして、その犯人は未だに捕まっていなかった。　 光一「物騒だよなぁ。いい加減にしてほしいぜ」 彩音「そうだね。犯人も捕まってないし」 光一「彩音、お前も気を付けろよ。変なやつに何かされそうになったら、大声 出すなり逃げるなりするんだぞ」 彩音「あ、うん」 　でも、そんな人に出会ったら、そんな風に出来る自信なんてない。 　きっと怖くて、その場で立ちすくんじゃうと思う。 　でも、ちょっとだけ嬉しかった。光一が、私のことを心配してくれたから。 瑞希「ねえねえ、私は心配してくれないの？」 　瑞希が、ちょっとしなを作って光一に問いかけたけど、光一はあきれた顔を して言った。 光一「お前は……大丈夫だろ？　むしろ、犯人の方が心配――」 光一「が！」 彩音「あっ」 　私が見ている目の前で、瑞希の肘鉄が光一のみぞおちに決まってた。 光一「……っ！！！！」 　表情が固まったまま、光一がうずくまる。 瑞希「あらぁ〜、どうしたのぉ〜？」 彩音「大丈夫〜、光一〜」 　うずくまった光一に声をかけ、背中を撫でてあげた。 彩音「もう〜。でも、今のは光一が悪いよ。瑞希だって女の子なんだし」 光一「馬鹿野郎、こいつが女か！？　喧嘩したら俺より強いんだぞ」 ガシ！ 光一「ぐあ！」 　今度は、頭の上にげんこつ。 瑞希「それ以上軽口叩くと、本当にぶっとばしちゃうわよ」 　……もう十分ぶっとばされてるって思うけど。 彩音「ね、ねえ、それより瑞希。怪我の方はどう？」 　ちょうど瑞希の腕の包帯が目に入ったので、話を逸らそうと別の話を振って みる。 瑞希「大丈夫よ。もともと、たいしたことはなかったしね」 　そう言って、怪我をしている左腕をぶんぶんと振り回した。 　ちょっと前に、転んで怪我をしたって言ってたけど、その包帯姿がちょっと 痛々しい。 光一「心配しなくても大丈夫よ。転んで怪我しただけなんだから」 彩音「……光一、気持ち悪いよ、その声」 　せっかく話を逸らしてあげたのに、また火に油を注いでる。 瑞希「自分の部屋の、見られちゃまずい物は片付けてある？　もしそうだった ら、今この場で引導を渡しちゃうけど？」 　ぼきぼきと手を鳴らしながら笑ってる瑞希。 　私は、いつもの悪ふざけだって判ってるけど、知らない人が見たらちょっと 怖いかも…… 光一「……いや、ごめんなさい。勘弁してくれ」 彩音「もう、光一〜。それより、早く学校行こうよ。遅刻しちゃうよ」 　ちょっとしたやりとりだけど、結構な時間が経ってるのは判った。 瑞希「そうね、行きましょ」 彩音「ほら光一、立って」 　うずくまってる光一を立たせて、私達は一緒に歩き出した。 　でも、その時、瑞希が一人立ち止まったまま、さっきの公園の方を見ていた。 彩音「瑞希、どうしたの？」 瑞希「……うん。すぐ行く」 　何だか、今の瑞希は怖かった。 　さっき、光一と悪ふざけしていた時は違って、本気で何かを睨み付けるみた いに見ていたから。

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チャイムが鳴った後、担任の先生が教室に来て朝のＨＲが始まる。 　でも、今日は先生が一人の女の子を連れて教室に入ってきたので、いつもと はちょっと違うＨＲになった。 光一「へぇ〜、転校生か」 　クラスの男子が騒ぐのと同時くらいに、すぐ隣の席の光一が物珍しそうな目 で転校生を見て呟いた。 美夕「山野美夕です。よろしくお願いします」 　肌の色が白くて、かわいい娘。女の私から見ても、そう思うから、男子が騒 ぐのも無理無いかもしれない。 　でも、光一も同じように騒ぐのを見ると、ちょっと悲しくなる。 　別に、それは光一の自由だから、私がこんなことを思うのは変かもしれない けど。 　彼女の挨拶が終わって私達の自己紹介が終わると、彼女は割り当てられた窓 際の席に座る。 　廊下側の私とは遠く離れてるので、何か機会が無いと声をかけることなんて 無いだろうなって思った。 　そして、いつも通りの授業が始まる。

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一日は早い。 　今日も、平穏な一日が過ぎていった。 光一「彩音〜、帰ろうぜ〜」 彩音「うん、ちょっと待って」 　私は、教科書とかを手早くまとめて鞄の中に入れる。 　でも、急かされてるみたいで焦ってた私は、筆箱や教科書を落としたりして、 普段より余計に時間がかかった。 瑞希「彩音〜、置いて行っちゃうよぉ〜」 　今度は、瑞希が呼んでる。急かさない欲しいのに。 彩音「ちょっと待ってよ〜」 　やっと荷物をまとめ終わったあと、私は急いで廊下で待ってる二人の側に行 った。 美夕「さようなら」 　昇降口で靴を履き替えていると、ちょうど帰ろうとしていた山野さんと出く わし、彼女にそう話しかけられた。 彩音「あ、うん。さようなら」 　転校生の山野さんと話をするのは、これが初めてだった。 　私も一応クラスメートだから、休み時間にでも話かけようと思ったけど、他 のみんなも同じことを考えていたのか、色々なことを話しかけてるのを見て、 結局話しかけることが出来なかったから。 瑞希「あ、ねえ、山野さんの家って何処なの。よかったら、一緒に帰らない？」 　私の隣から身を乗り出して、瑞希がそう話しかけた。 美夕「え？　あの、ごめんなさい。何処って言われても、まだこの街よく知ら ないから……」 瑞希「あ、そうか。ごめんね。じゃあ、歩きながらでいいから、どっちの方か 教えてよ」 　こういう時の瑞希は、本当に頼りになると思う。 　人見知りしないで、誰にでも話しかけられるんだから。 美夕「うん、いいよ」 　山野さんがそう答えたので、私達は一緒に昇降口から出た。

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瑞希「よかった。山野さんの家が、私達と同じ方向で」 　学校を出た後、私達は途中まで一緒に帰ることにした。山野さんの家が、私 達の家の方と同じだからだった。 光一「じゃあ、意外と近いのかな？　どの辺り？」 美夕「えっと……ごめんなさい。私まだ……」 瑞希「光一〜、山野さんはまだこの街に来たばかりだから無理だよ、そんなの」 光一「あ、そりゃそうだな」 　光一と瑞希は、こんな調子で山野さんに話しかけていた。 瑞希「でも、こんな時期に転校って珍しいよね。もうすぐ夏休みだしさ」 美夕「うん。家の都合で、ちょっとね」 瑞希「ふぅん、大変ねぇ」 　私は、そんな三人の会話する姿をただ見ているだけ。どうしても、話しかけ るタイミングが掴めなかったから。 美夕「どうしたの？」 彩音「え？」 美夕「元気が無いみたいだから」 彩音「あ……ううん、そんなことないよ」 　突然話しかけられて、私はしどろもどろでそう答えた。 美夕「そう」 　山野さんの笑顔。 　転校の挨拶から今までの会話を見ていて、どちらかといえばあまり感情を表 に出さない人だって感じがしてた。 　でも、今見せた山野さんの笑顔は、凄く綺麗だった。 美夕「あ……私、こっちだから」 瑞希「あ、そう。じゃあ、さよなら。また明日ね」 光一「また明日な」 　私は声に出さなかったけど、小さく手を振った。 美夕「うん。また明日」 　そう言って彼女は歩きだそうとして、一度振り返った。 美夕「みんな、私のことは美夕って呼んでいいよ。じゃあね」 　手の平をひらひらと振り、そして最後に私にだけ笑顔を向けると、美夕は路 地の先に駆けだしていった。 瑞希「美夕だって」 光一「結構、かわいい名前かな？」 瑞希「何言ってるのよ、このスケベ」 光一「何だよ。別に、かわいい名前って言っただけじゃないか」 瑞希「あんたの顔がにやけてたからね、思わずそう思ったのよ」 光一「ふん。しょうがないだろ。少なくとも、お前よりは美人だからな」 瑞希「何ですってぇ〜」 　相変わらず、ささいなことでじゃれあう二人。 　そんな二人を尻目に、私はちょっとだけ気分が落ち込んでいた。 　二人は何の気兼ねもなく山野さんに話しかけてたけど、私はそれが出来なか ったから。 瑞希「彩音」 彩音「え？」 瑞希「明日から、元気に話しかければいいじゃない」 彩音「あ、う、うん」 　いつも思うけど、瑞希は本当に鋭い。 　私の思いを汲み取って、励ましてくれるんだから。

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「気配が三人からするね」 「皆が、神魔という訳ではないようですが」 「うん。ラヴァは、誰が神魔だと思う？」 「……」 「あの娘じゃなければいいな」 「大人しくて、可愛い娘だね」

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瑞希「おっはよ〜、彩音〜」 美夕「おはよう、結城さん」 　翌日、いつもの時間に家を出て朝の待ち合わせ場所に行くと、瑞希と美夕の 二人が待っていた。 彩音「あ、おはよ〜、ございます」 　思わずいつもの調子で挨拶をしようとしたけれど、側に山野さんがいたから 途中で取って付けたみたいに丁寧な言葉になった。 　どうして山野さんがいるのかって、ちょっとだけ疑問に思ったけど、家の方 向が同じだから待っていてもおかしくないのかもしれない。 　でも、見慣れてないこともあるのか、何だか瑞希と山野さんの二人が並んで る姿って不思議な感じだった。 瑞希「さて、あとは光一だけね。あの馬鹿、寝坊なんかしてないでしょうねぇ」 　そういえば、光一がいない。 　時々、こんなことがあるけど、瑞希が言う通り殆どが寝坊だったりするけど。 美夕「ねえ、結城さん？」 彩音「え？　あ、はい？」 美夕「行きも帰りも、みんなと一緒なの？」 彩音「あ、う、うん」 　突然話しかけられてびっくりした私は、しどろもどろになってそう答えた。 美夕「ふぅん。仲良し三人組ってところかな？」 彩音「う、うん」 　私は、何か、何か話しかけなきゃって思う。 　調度良い機会なんだから。 彩音「あ、あの山野さんさえよかったら、これからも朝一緒にいかない？」 美夕「いいの？」 彩音「う、うん。ほら、私達は毎日ここで待ち合わせてるし。山野さんさえよ ければだけど」 美夕「うん。私も構わないよ」 　そこで、会話が途切れた。 　私は、また何か話すことがないかなと思って色々考えるけど、頭の中が真っ 白になって何も浮かばない。 美夕「結城さん」 彩音「あ、はい？」 美夕「そんなにかしこまらなくてもいいよ」 彩音「あ……」 　まるで、私の心を見透かされたみたいだった。 美夕「私達、もう友達なんだから、ね？」 彩音「う、うん」 美夕「それと、昨日も言ったけど、私のことは美夕でいいよ」 彩音「あ……それじゃ、私も彩音でいいから」 　何だか不思議だった。 　美夕の言葉が、自分の中にすんなり入ってくる感じがして、身構えていた 私の心に、ほんの少しだけど安心感を抱かせてくれた。 美夕「うん。よろしくね、彩音」 瑞希「あ、あの馬鹿、やっと来たよ」 　瑞希の言葉を聴いて振り向くと、光一がこっちに走ってくるのが見えた。

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《背景−教室》 　昼休み。 　美夕と瑞希と私の三人で、他愛のない話で盛り上がりながらごはんを食べ る。 瑞希「それでね、彩音は光一のことが――」 彩音「ちょ、ちょっと、瑞希〜」 　瑞希は、ここぞとばかりに私が恥ずかしくなる話を聞かせてる。 美夕「ふ〜ん、そうなんだ。意外だね、彩音」 彩音「だから、違うよぉ〜」 　私は、初対面の人と打ち解けるっていうのは苦手だった。 　一度仲がよくなっちゃえば、はしゃいだりするのにも抵抗は無くなるんだ けど、そうなるまでが大変で、こういう時はたいがい瑞希に頼ることになる。 　瑞希は人見知りしないし、何よりも明るくて話上手だから、誰とでもすぐ 仲良くなっちゃうから。 　でも、この時の話題はさすがにちょっと恥ずかしかった。 瑞希「何よ、彩音ったら無理しちゃって」 　私と瑞希のやりとりを、美夕は笑みを浮かべながら見ていた。 彩音「もう、そんなことばかり言ってると私も瑞希の秘密ばらしちゃうよ！」 彩音「あのね、瑞希ったらね、昔川に落ちたことがあってね」 瑞希「あー！　その話は駄目〜〜！！」 彩音「やだよ〜、やめないもん。あのね、何で落ちたかっていうと――」 「るんるんる〜ん」 　今日も元気、鼻歌交じりでご機嫌な瑞希ちゃん。 　お友達の彩音ちゃんと遊ぶために、待ち合わせ場所に向け歩いてる時でし た。 「きゃん！」 　突然、大きな泣き声が聞こえたので、足元を見てみました。 「ありゃ？」 「ウウ〜〜！」 　そこにいたのは、こわ〜い顔をした犬さん。 　その尻尾には、誰かに踏まれた後が残っていました。 「わんわんわん！」 「きゃ〜〜〜！！」 「あれ、瑞希どうしたの？」 「うわ〜〜ん！！！！」 「助けてぇ〜！」 「わうがうがう」 「み、瑞希〜、そっちは――」 　ばっしゃ〜〜〜〜〜ん！ 「うにゅ〜〜〜」 美夕「ふふ」 瑞希「あ〜！？、美夕、今笑った〜！」 美夕「ごめんね。思わず……」 彩音「もう、その後は大変だったんだよ」 瑞希「彩音〜、もうやめてって〜」 美夕「ふふふ」 　美夕は、よっぽど笑いのつぼに入ったのか、くすくすと笑い続ける。 瑞希「うう〜、美夕こそ意外と意地悪いよぉ〜」

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瑞希「あーあ、光一も付き合いが悪くなったものねぇ〜」 彩音「仕方がないよ」 　放課後。 　いつもの通りみんなで帰ろうと思ったら、光一は用事があると言って別々 になり、仕方ないので私と瑞希、そして美夕の三人で帰ることにした。 美夕「仲が良いんだね、三人とも」 瑞希「まあね。昔からの幼なじみだしさ」 美夕「幼なじみ、か。何だかいいね、そういうのって」 彩音「でも、最近は滅多に遊ばなくなったのも確かだよね」 瑞希「でしょ？　男同士でつるんでる方が多いしさぁ」 　瑞希の言う通りだった。 　最近、光一は男友達と一緒にいる方が多かった。 瑞希「昔はよく三人で遊んだよね。野原を走り回ったり、虫を捕まえたり、 ままごとしたりしてね」 美夕「昔か。でも、それはしょうがないんじゃないかな」 彩音「え？」 美夕「男の子ってあのくらいの年になると、女の子と一緒に遊ぶってことを しなくなるから」 美夕「それに、人はいつまでも同じままじゃいられないしね」 彩音「……」 　今の美夕の言葉、凄く重みがあった気がする。 　でも、頭で判っている反面、年月によって私達の関係が疎遠になっていく のが、ちょっと寂しかった。 瑞希「でもさ、私は彩音の側にいるから安心しな」 彩音「え？」 　突然、瑞希がそんなことを言った。 瑞希「男の子は男の子同士、女の子は女の子同士。私達は、私達でやってい けばいいじゃない」 彩音「瑞希……」 　ちょっと嬉しい。 　瑞希は、いつも私を励まして安心させてくれる。 　本当に、本当に優しい。 美夕「二人は、もっと仲が良いんだね」 瑞希「うん。私達、親友なんだ」 美夕「そう」

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「こんにちは」 「何してるの？」 　顔を上げてみると、知らない人だった。 「側に座っていいかな？」 　町外れにある野原。 　私のお気に入りの場所で、嫌なことがあったりすると、よく来る場所だっ た。 「風が気持ちいいね」 　その人は、しきりに私に話しかけてくる。 　でも、初めて会った人だから、私は何も答えなかった。 　見ず知らずの人には、付いて行っちゃいけないってお母さんに言われてる し、答えなければきっと何もしないって思ってたから。 「ねえお嬢ちゃん、お名前何て言うの？」 　でもこの人、とても優しい感じがする。 　お母さんとは違うけど、何か別の優しい感じが。 「私は、彩音。彩音って言うの」 　ほとんど無意識に、私は答えていた。 「そう。いい名前ね」 　そう言って、女の人が浮かべた笑顔はすごくきれいだった。 　 思い出の幼なじみ　第一部・完（デジタルノベル吸血姫美夕１に続く）

あとがき