両作品について

裏世界の存在 「必殺！」と「美夕」は、形は違うものの、 その物語は非常に似ている。 まず言えることは、「必殺！」も「美夕」も、 表社会からは完全に切り離された世界での物語 ということだ。 「必殺！」の場合、裏の世界に生きる闇の仕事師達が、 仕事料を受け取って、その指名を果たす。 一方「美夕」は、闇にうごめく神魔を、 闇へと帰す役目を持つ。 そのどちらも、裏の世界で起こることであり、 「必殺！」の面々や、「美夕」の面々も、 裏世界に存在しているのだ。 だが、生きている以上、当然のことながら表の顔も持つ。 「必殺！」において、それは表の家業であり、 「美夕」では、学校に通うごく普通の「学生」を装う、 美夕の姿だったりする。 でも、その存在が許されるのは、裏の世界が主であり、 表の顔は世を忍ぶ仮の姿なのである。 理由があって動く 「美夕」は、人の血を吸うことで生きている。 それは、人が物を食べるのと同じことで、 生きていくためには仕方のないことだ。 でも、だからといって、美夕は人の血であれば 何でもいいという訳ではなく、常に吸う相手を選ぶ。 それは美夕自身のプライドもあるだろうが、 それ以上に自身への戒めのようにも見える。 「血なら何でも」となると見るからに浅ましく、 他の「はぐれ神魔」達と一緒になるからだ。 さて「必殺！」についても、似たようなことがある。 それは、依頼と仕事料だ。 彼らは「殺し屋」であり、依頼と仕事料があれば、 その殺しを請け負う連中である。 だからといって何でも依頼を受けるという訳ではなく、 彼らが請け負うのは、弱者の涙に濡れた依頼と、 そのお金を受け取った時だけである。 「世の中の悪い奴を、弱者に代わって恨みを晴らす」 これが、彼らの掟なのだ。 金さえ払えば、誰でも殺すとなると、 本当にただの「人殺しに」なってしまうだろう。 ただ、ここで注意する点があって、悪い奴だからと いっても、仕事料を受け取らずに殺すことは、掟で 許されないことになっている。 「世の中の悪い奴を殺す」という行為は、 一見すると「神様の行い」に見えなくもない。 だけど、人は神になれるわけではないし、 どのような理由があるにしろ、人殺しは人殺しなのだから。 「必殺！シリーズとは？」で紹介した中村主水の言葉は、 彼らの心構えを現している言葉として有名なセリフだ。 世の矛盾 「必殺！」シリーズで、名作の一つと称えられる 「暗闇仕留人」という作品。 この作品に登場する、「糸井貢」という仕事師は、 愛する妻を殺されたことにより、世の中のある矛盾に 気がついてしまった。 その有名なセリフの一つに、以下のようなものがある。 「俺達に殺られた奴らにだって、 妻や子がいたかも知れないし、 好きな奴があったかも知れないんだ」 この言葉は、「殺し屋」として生きている者にとって、 絶対に考えてはいけないことだろう。 「殺し」を主題にした作品で、このような考え方をした 人物が出てきたのは、おそらく初めてだった。 （暗闇仕留人は昭和49年に放映） このことに気がついてしまった彼には、 当然のごとき運命が降りかかってしまう。 これと似たことが、美夕にあることに 気がついている人は多いだろう。 「はぐれ神魔を闇に帰すこと」。 それが美夕の運命である。 それによって、一体何がどうなるのか。 美夕自身も、それは知らないし考えるつもりもない。 ただ、「運命だから」ということをだけで、 監視者としての使命を遂行し続けている。 「はぐれ神魔にも、いい奴はいる」 こんなことを考えてしまえば、美夕ははぐれ神魔を 闇に帰すことなど出来なくなるのだろう。 もし、美夕が「糸井貢」のような考え方を持ったとき、 きっと美夕に降りかかる運命は彼と同じものなのかも しれない。 ただ、最近の美夕は明らかに甘くなってきてのが 気になるけど・・・ 行き着く先、それは・・・ 「必殺！」の登場人物は言う。 「俺達の行き着く先、それは地獄だ」と。 理由はどうであれ、人を殺し続ける彼らは、 自らの運命を悟っているのだ。 では、美夕はどうなんだろう。 「監視者としての使命」は「はぐれ神魔」を闇に帰すこと。 美夕は、神魔を殺してるわけではないけど、 その結末がどうなるのか非常に気になる。 美夕の行き着く先。 あなたは、どう思いますか？