感想（柚月未憂）

　本作メインヒロインの一人であり、主人公と同じ定時制の高校に通う女
の子。

　クラスメートなのだが、主人公は彼女との出会いがあるまでは、まるで
その存在を認識していなかった。

　そんな彼女との出会いは、ある日の夜。帰り道に浜辺を通った時、砂浜
に腰を下ろし、砂を手にとって遊んでいるのを見かけた時だった。

　こんな夜に女の子が何故と思っていると、やがて彼女は積極的に主人公
に話しかけてくる。

　しかも、主人公の名前までも知っているということで、初めは「何故？」
という感じだった。

　性格は、元気で笑顔を絶やさず、何処にでもいる普通の女の子といった
感じだが、そんな彼女も自分が病気であることを主人公に伝えてくる。

　でも、初めのうちは、その病名を教えてはくれなかった。

　その外見の元気さから、どう見ても普通の女の子であるし、一体どうい
った病気なのかまるで判断が付かなかったからだ。

　彼女には家族がおり、既に両親は他界しているものの、祖父と祖母から
の愛情に恵まれ、本当に幸せそうな女の子だった。

感　想

　序盤は積極的に話しかけてくる彼女に、主人公が引っぱられていくとい
った感じで物語は進みます。

　大人しくて子供っぽい外見の割には意外に積極的な面もあり、何かにつ
けて主人公に話しかけてきたりします。

　そんな未憂に不思議な感情を抱き始める主人公。

　それが、恋なのかどうかは、理解できないまま二人の距離は次第に縮ま
っていきます。

　けれど、物語が中盤に差し掛かるあたりで、アレが起きてしまいました。

　そう、主人公の持っている心の病、「回避性人格障害」。

　未憂との距離が縮まっていくに連れて、その症状が明確になってきます
が、それを未憂のせいにしたくない主人公は、薬を飲みあえて我慢し続け
ます。

　でも、とうとうそれが限界になりました。

　心の病が体調不良にまで及び、学校を休む主人公。そして、それを聞い
た未憂はお見舞いにやってきますが、それを拒もうとする主人公。
（ここは選択肢なんですが・・・拒んだらバッドエンド直行でしょう）

　未憂の心の内を暴露され、自分の病気のことを話す主人公は、同時に未
憂の病気のことも知らされます。

　未憂の病気。

　それまで、会うのは夕方から夜にかけて。しかも、必ずと言っていいほ
ど、建物の中だった理由。

　「色素性乾皮症」。先天性の遺伝子疾患で「光線過敏症」とも呼ばれる
不治の病。（これは実在する病気ですし、私も知ってました）

　紫外線が肌にあたるだけで、体の組織が壊死していく病気。そう、つま
り、未憂は「昼に外に出ることが出来ない体であり、例え夜であっても、
外出は極力避けなければならない」。

　それまで、未憂の飲む薬の量を見て、ただならない病気であることを感
じ取っていた主人公ですが、これを知った時は、かなりのショックだった
ようです。

　だって、この世界に紫外線が降りそそがない場所なんて無いんですから。
（月の光は太陽光が反射したものなので、当然紫外線が含まれています）

　そして、未憂は問いかけてきます。自分に優しくしてくれたのは、同情
からだったのかと。

　心に病を抱えている主人公は、即答出来ません。でも、それでも未憂を
抱きしめてしまいます。

　それが、もう後戻りすることが出来ない、荒波に飛び込むことになるこ
とだとしても。

　物語終盤になると、もう正直言って見ていられません。

　病気の影響で、未憂を思わず遠ざけてしまう主人公。そんな主人公を慕
って、真っ昼間から主人公の家にまでやってくる未憂。

　ただ、あなたが好きだからという、その思いだけで、自らの体に訪れる
運命をかなぐり捨てて会いに来ます。

　それを目の当たりにした主人公は、とうとう本当に未憂を受け入れまし
た。肌を重ね合わせ、そして自分の夢を語る未憂。

　そして、未憂の思いを汲み取った主人公は、昼間に未憂を連れてあの海
岸へ。

　それは、未憂の願いがかなった瞬間でした。

　日の光の下で、自由に動き回る。でも、それは束の間の夢。

　主人公が見ている目の前で、未憂は静かに、そしてゆっくりと波間へ倒
れ込んでしまいます。

　そして告げられる運命。

　収容された病院で、未憂の容態を聞く主人公。そこには、未憂の祖父母
がやって来ていて、主人公に礼を言います。

　それは、未憂が主人公と一緒にいるようになってから、ずっと笑顔を見
せていたから。

　耐え難い体の痛みに襲われても、がんばれたのだと。

　それを聞いて主人公（私も）は愕然。未憂の容態が、すでに出会った頃
には手遅れだったということ。

　最後に、未憂の病室に入り、そして見せられた腕の一部。そこは、既に
黒く壊死した肌が。そう、未憂の体はすでに癌で犯され、末期の状態にま
で陥っていました。

　自分のせいだと言う主人公に対し、それは違うと静かに答える未憂。

　そして・・・残った僅かな日々を、主人公は未憂と共に過ごすのでした。

夢をかなえて・・・

　さて、とりあえず未憂シナリオはこれで終了です。

　終盤はもう、何て言っていいか判りませんね。

　だって、末期ですよ。癌ですよ。なのに、いつも笑顔で、常に元気いっ
ぱいで・・・そして、それを最後まで。

　途中、未憂の気持ちが見えづらいので、どういう形で収束するのかと思
ったら、「死」というあまりにもストレートなエンドを迎えるとは。

　夢をかなえ、そして散っていった未憂。

　そして、未憂の死という現実を突きつけられた主人公は、この先、きっ
と力強く生きていくことでしょう。

　だって、そうじゃなければ、未憂に顔向けが出来ないですから。

　もし、ヘタレた人生を歩んだりしたら、私が許しませんよ。（何故！？）

　では最後に、今回も言葉で締めくくります。

「あなたは自分の中の天使をみつけることができましたか?」