感想（川原砂緒）

　本作メインヒロインの一人であり、主人公の幼馴染みで、更に同じ定時
制の高校に通う女の子。

　ちなみに、彼女の住む家は、主人公が住むマンションのすぐ上の階。

　しかし、主人公が定時制の学校に通うようになってから数ヶ月間、運が
悪かったのか、一度も学校でも通学路でも顔を合わせることが無かった。

　そんな彼女との出会いは、学校でのこと。ある日、廊下で偶然にも彼女
と出くわすことになる。

　二人とも、相手を見た時点で驚いたが、主人公は砂緒よりも更に驚いて
いた。

　というのも、砂緒と顔を合わせるのは５年ぶりくらい。しかも、彼女は
今この学校ではなく、何処か別の高校に進学したと聞かされていたから。

　なのに、何故彼女が今、この学校にいるのか。それが不思議でならなか
った。

　そして、もう一つ主人公が驚いたのは、その雰囲気。

　かつて、主人公が知っている「川原砂緒」という少女は、明るくて屈託
のない笑顔が絶えない少女であったにも関わらず、今の砂緒からはまるで
その片鱗すら伺えないくらい、変わってしまっていた。

感　想

　序盤は、定時制の学校が終わった放課後に音楽室で、話をする程度の関
わりから始まる。

　誰もいない音楽室で、ピアノを見つめる彼女。鍵盤に手を掛けるだけで、
まるで弾こうとしないその様子に、主人公は余程のことがあったのだろう
と推測する。

　何故なら、主人公の知っている「川原砂緒」という幼馴染みの少女は、
ピアノを弾くことが大好きで、昔はよく主人公の家にあるピアノを弾きに
毎日のように通ってきていたのだから。

　一体何があったのか、それを聞こうと思うが、とてもそんなことを聞け
るような雰囲気ではなく、そのまましばらく時が流れる。

　ただ、砂緒は、主人公と再開したことで、かつてピアノを弾いていた楽
しさを思い出したのか、徐々にピアノを弾くようになっていきます。

　それを見て、徐々に安心感が広がっていく主人公。

　ただ、日々の雑談の中で話が砂緒の妹「川原真名」のことになった途端、
拒絶する態度を示す彼女。

　そのことから、おそらく妹とのことが、何かしら関係しているのだろう
と推測出来てしまう。

　しかし、それも物語が進むに連れて、彼女の心境の変化により、徐々に
だけれど妹のことを受け入れるようになっていく。

　そして、物語中盤の「川原真名・お誕生日会」での出来事で、砂緒は自
分の弱さに気が付きます。

　その出来事というのは、「真名」が心臓の病気を患っているのを知った
こと。

　砂緒は、姉というだけで妹より辛くあたられ、妹は姉の苦しみなど知ら
ず、そして両親も姉の心情も察せず、何かと言えば妹の「真名」を可愛が
っていると思いこんでいた。

　ただ、ピアノだけは・・・ピアノの実力だけは妹に負けないと思い、砂
緒はコンクールに出たりもした。良い結果が出れば、両親は自分を見てく
れるだろうという思いから。

　でも結果は、必ずしも良いものではなかった。

　自信を失った砂緒は、逃げるように前の学校を辞めて、今の定時制の学
校に。

　でも、そんな真名が、実は心臓に病気を持っていたなんて、砂緒は知り
もしなかった。

　両親からも聞かされておらず、ようするに両親が真名を大切にしたのは、
そういう経緯があったから。そして、それを知らなかった砂緒から見れば、
常に妹を優先されていたと見えてしまった。

　両親は砂緒のことを思い、良かれという思いから、真実を伝えなかった。
けれど、それが、かつては仲の良かった姉妹の気持ちのすれ違いを生んで
しまった。

　けれど、それを知ってから、砂緒の様子が更に変わっていく。

　物語終盤に至っては、かつての自信を取り戻し、ピアノのコンクールに
出まくっては、良い成績を収めるということを繰り返し始めた。

　誤解が生んだすれ違い。それが、正しい方向に修正されたことで。

　とまあ、ここまでが大まかな流れですが、このシナリオ。基本的に、殆
どが砂緒のことばかりで、主人公のことはあまり語られません。

　主人公がしたことと言えば、砂緒の自信を取り戻してあげて、妹との仲
を再び元の関係に戻し、そしてかつてピアノを弾くことが大好きだった頃
の「川原砂緒」に戻したこと。

　もちろん、途中には様々な葛藤があり、肌を重ねた時もありましたが、
基本的に主人公のことは、あまり語られません。

　でも、砂緒という少女の支えになったことが、主人公の持つ「回避性人
格障害」に何らかの影響を及ぼしたのか、気が付けば薬無しでも生活出来
るようになったことくらいでしょうか。

　ただ、最後に砂緒が主人公の前で、その思いを伝えること。そして、そ
れを主人公が受け入れたことにより、お互いが本当に必要な相手だという
ことを自覚することが出来ました。

　二人の本当の物語は、きっとここから始まるのでしょう。

　それは、お互いに支え合うことが出来る、大切な相手との物語。

心の支え

　砂緒シナリオはこれで終了です。

　今までのシナリオと違い、どちらかというと若者の持つ心の弱さという
面にスポットがあったっていた物語。

　些細なすれ違い。それが、一人の少女の心を荒ませていき、その心を支
えてくれる相手と出会ったことによって、かつての自分を取り戻す。

　涙腺を刺激する物語ではありませんが、柔らかな日差しの中で語られる
物語とでも言えばいいでしょう。（この表現で判るかなぁ）

　とりあえず、砂緒は元の元気な少女に戻り、主人公も心の病を克服した。

　翼を失った天使のような彼女は、再びその翼を取り戻した。

　そして、二人は手を取り合って生きていく。お互いを心の支えとして。

　それは、これからもずっと・・・でしょう。

　では最後に、またまた、この言葉で締めくくります。

「あなたは自分の中の天使をみつけることができましたか?」

　ＰＳ 　ちなみに「川原砂緒」の声優さんって、生天○仁美さんですよね？

　テレビアニメでは、「極上生徒会」とか「月姫」とかに出てる、今や人
気声優の仲間入りをした。

　一応、裏を取ったので、間違いないですよ、はい。
（最近、１８禁ゲームに普通の声優さんがよく出るなぁ）